退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『勲章』(1954) / 戦後の再軍備をめぐる運きのなかでの悲劇

シネマヴェーラ渋谷の《渋谷実のおかしな世界》で映画『勲章』(1954年、監督:渋谷実)を鑑賞。元陸軍中将が戦後、再軍備運動に入れ込み、その末にたどる悲惨な結末を描く。俳優座映画。

元陸軍中将岡部(小沢栄)は、戦後、ちか子(香川京子)と憲治(佐田啓二)の二人の子どもともに義兄の家の離れに居候している。戦犯として服役していた元部下の寺位(東野英治郎 )が帰国し、再軍備運動を始め岡部をリーダーに担ぎ出す。岡部は故郷の山林を抵当に入れて活動資金を調達し運動に傾倒していくが、寺位が起こした密輸事件がマスコミに報じられ再軍備計画は水泡に帰し、岡部はすべてを失う。

計画が失敗したあと、岡部は、憲治が勲章を勝手に持ちだし、いまさら再軍備に固執する自らの未練を愚弄されたことに腹を立て、かつて自分の持ち物だった山林で息子を射殺。自らも後を追う。一方、娘は家を出て結婚し新しい生活を始める。

まあこんな話だ。岡部が軍人として一生の成果とも言える勲章が、権威主義の象徴として描かれている。大切にしていた勲章が持ちだれたことを知り、取り戻すためにある女の部屋を訪ねた岡部が、女のペット犬が勲章をぶら下げているのを目の当たりする場面が圧巻。

再軍備の話を理解するには、時代背景を理解しないといけないのだろうが、自衛隊発足前夜というところか。劇中では保安隊と言っている。再軍備日本国憲法との兼ね合いも語られると思ったが、政治的な言及はあまりなく肩透かしを食う。いま見るならもう少し時代背景について説明がほしいところだ。

父・息子・娘の三人が、再軍備運動の渦中、それぞれ時代に乗れなかった男、巻き添えを食った男、新しい時代に踏み出す女として描かれていて、ドラマとしてもまあ面白く見れる。

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