退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)』(2015) / 沖縄で今、何が起きているのか?

ポレポレ東中野で『戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)』(2015年、監督:三上智恵)を見てきました。この作品は、辺野古新基地建設に反対する沖縄の人たちを描いたドキュメンタリー映画です。基地問題に関心がある人は多くないだろうと思いながら、劇場に足を運びましたが会場は満席でパイプ椅子が出る盛況ぶりでした。


『戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)』劇場予告編 - YouTube

沖縄で何が起こっているのか本土には伝わってきません。

基地建設現場周辺の海上では反対派のカヌー隊が海上保安庁に阻止される様子、そして陸上で工事のための資材搬入を阻止するべくゲート前で座り込む反対派が警官隊に排除される様子が延々と映しだされます。テレビでは見ることができない映像です。

警備と反対派との間の関係が思ったよりヌルいことにも驚きました。海保も警察も反対派の人たちを傷つけないように細心の注意を払っていて、一方の反対派も過激な行動はとりません。

海保の人たちの海上でのスキルはムダにすごいし、機動隊も盾や警棒で武装しているわけではなく普通の制服です。その気になれば反対派を蹴散らして全員逮捕することも簡単でしょうが、それをやらないことが両者の微妙な関係がうかがえます。

興味深いのは地上では、警官隊のほかにも民間警備会社(映像ではALSOK)で投入されていて、うまく使い分けしていることです。警官隊と反対派との間の緩衝材のように機能していて正面衝突を避けているようでした。

反対運動の映像に加えて、これまで基地と折り合いをつけて生きてきた現地の人たちの思い、地域コミュニティの紐帯、そして豊かな文化や暮らしが率直に描かれていることに注目したい。どのような人たちが反対しているのか垣間見ることができます。ここが肝ですね。

そうは言うものの気になることもあります。

第一に何かと言うと70年前の沖縄戦を引き合いに出して感情に訴えようとすることです。確かに沖縄戦は大変な苦難だったでしょうが、当時とは状況が大きく変わっているのに毎回沖縄戦を持ちだしされては正直うんざりします。ついにはYou Shall Overcome. を大合唱。いつの時代ですか。

第二は反対派は基地問題をどうしたのかも伝わってきません。辺野古基地は普天間基地の代替施設として建設されることになっています。ただ辺野古基地建設反対というばかりで普天間基地について言及がありません。また基地さえなければ平和になるという考えはあまりにナイーヴすぎるでしょう。

第三は沖縄はどうしたいのか。これはかなり大きな話ですが、日本政府が正式な手続きで進めている国策として安全保障政策に反対するということは、突き詰めると沖縄の分離独立に行き着きます。そこまで視野に入れて反対運動をしているのか。沖縄独立論についても触れてほしかった。

上記の点はいまでも釈然としませんが、それでも「基地問題」にほんのちょっぴりですが近づけた気がしました。それだけでも作品を見た意義はあったと思います。多くの人に見てもらいたいドキュメンタリーです。
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