新文芸坐で「トウキョウソナタ」(2008年, 黒沢清)を鑑賞する。黒沢清監督作品ということで、ちょっと覚悟して観に出かけたが、結構普通の映画だった。次男の階段落ちのシーンで、ついに来たかと思ったが、スラップスティックなのは、このシーンだけだった。
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最近、家族をテーマにする日本映画が多い。この映画も、そのなかの遅れてきた一本である。父のリストラに始まり、徐々に家族の抱える問題が顕在化していく。ついには、父は車に轢かれ、母は誘拐拉致され、長男は中東へ赴き、次男は警察に留置されるという具合に瀬戸際まで追いつめられる。そしていよいよ家族の再構築となるわけだ。
しかしもっと極北まで行ってほしかった。例えば、香川照之は交通事故で重症を負い不具者となるとか、小泉今日子は肌を晒して闖入者・役所広司にひたすら犯されまくるとかいうシーンを見せてこそ、家族の真の再構築に進めるのではないか。
ラストで、次男が中学入試でドビュッシー「月の光」(思い出の曲であるのだが)をピアノ演奏するシーンが長々と続く。中学生とは思えない卓越した演奏だ。その間、観客に家族のあるべき姿を考えてもらうという演出だろうか。演奏終了後、家族は絆を取り戻して再生する。大団円。その後、会場を片づける物音だけが流れて終幕となる。なかなかいいラスト。
でも中東に残った長男は放置ですか。どうなったのだろう。