「大菩薩峠」(1960年, 三隅研次)をDVDで鑑賞。中里介山の長編小説の映画化。市川雷蔵主演の三部作の第1作。
- 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
- 発売日: 2004/09/24
- メディア: DVD
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「大菩薩峠」の映画化といえば、雷蔵のほかに、片岡千恵蔵と仲代達矢が机竜之介を演じているが、雷蔵はニヒルなピカレスクという雰囲気が漂いいちばん適役だろう。しかし雷蔵の難点といえば、あまりに眠狂四郎のイメージが強いため、この映画でもその影が払拭できないことだろうか。もっとも、原作は未読なので竜之介の人物像はいまひとつ掴めない。そもそも、なんでこの主人公は、理由なき殺人をくりかえすほど情緒不安定なのか。ただの人でなしか。
共演者では、中村玉緒(2役)が女の情念を感じさせるオイシイ役で特筆できる。今の玉緒しか知らない人には是非見てほしい。水車小屋で操を奪われるシーンなどは、なかなかの名場面。あと山本富士子も出ているが、さすがに綺麗なのだけど見せ場がなくてやや残念。
全編を通して色彩を抑えた画面がとても美しい。DVDに撮影現場のスチルが収められていたが、奉納試合のあとの森での闇討ちのシーンをスタジオで撮影したのには驚いた。てっきりロケかと思っていたのだが、大木をセットで再現した幻想的なセットはすごい。日本映画の黄金期が偲ばれる。三隅研次監督の本領発揮といったところ。
この映画は、竜之介が、兄の仇を討とうとする兵馬と立ち合い、これから剣を交えようというところで終わる。DVDを見ていて「えっ、これでおわりなの?」と思わず呟いたが、テレビドラマでもあるまいし、こんなエンディングでよかったのか。