退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落』(2014) / ある実業家の没落と夫婦愛

タイムシェアで不動産業界で大成功したヴィッド&ジャッキー・シーゲル夫妻は、フロリダに総工費100億円を投じて、個人の住宅としては最大級の自宅を建築することを決意した。ベルサイユ宮殿を模した大邸宅だ。しかし、リーマンショックにより会社倒産の危機に陥り、セレブ生活から転落した一家を描くドキュメンタリー映画

当初は豪邸建築の模様を映画にしようと撮影していたが、途中で事態が一変。図らずも一家の転落を撮影して映画したという。いくら金があるからといっても、どうしてあれほど大きな自宅をほしがるのはさっぱりわからない。日本人の感覚とはかけ離れていることにまず唖然とする。

見どころは転落後の一家の生活ぶりだろう。大勢いた使用人たちが去った後、ペットが死んだり、汚部屋になったりして、まともな生活を維持できない。もっとコンパクトな家に住み替えればいいと思うのだが……。そして嫁が家事がまったくできないことにも驚く。金銭感覚も狂っている。


映画『クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落』予告篇

この嫁はどのような人だろうと思っていると、モデル出身でミス・フロリダだった妻のジャッキーの生い立ちを紹介するシーンがあった。実家は庶民的で、大学卒業後にエンジニアとしてIBMに勤務するという、現在のグラマラスな容姿からは想像できないほど地味だ。

学生時代の写真をみると、痩せていて現在とはまるで容姿が違う。まさに「魔改造」というにふさわしい変わりようだ。彼女は、モデルに転身後、結婚するが失敗するなど決して恵まれた人生とはいえない。その後、紆余曲折を経て現在の夫・ヴィッドと再婚してセレブに上り詰める。

映画を見る限り、夫が事業に失敗して没落すると、夫に三行半を突きつけて逃げ出すかと思いきや、気落ちした初老の夫を支える彼女の姿は意外に思えた。これも愛の形だろうか。

ポスター A4 クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落 光沢プリント