退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】木村誠『大学大倒産時代 都会で消える大学、地方で伸びる大学』(朝日新書、2017年)

人口減少と少子化により大学経営が困難になりつつある時代に、大学全体の現況をざっくり把握するのに役立つ本です。大学関係者や受験生の親は読んで損のない本です。

ただし大学を取り巻く諸問題についてデータを基に論じるとされていますが、データは豊富に載っているものの十分に分析されていないのは不満です。これでは建設的な議論は期待できません。

さらに、文中にしばしば顔を覗かせる安倍政権批判も鼻につきます。なるほど大学の問題は政治とは切り離せないでしょうが、もう少し論理的に道筋立ててこれからの大学の姿を示した上で政治に言及してほしいものです。

正直、あまり新味はありませでしたが、なるほどと思ったことを二つ挙げておきます。

第一は、小池知事が反対を表明していた、文部科学省による「東京一極集中を食い止めるために23区私大の定員増認めず」という方針についてです。この方針が実施される前に都内の有名私大ちゃっかり定員増を申請して認めていたとのこと。なんだかなぁと思いました。まあ、こんな政策で東京一極集中が止まるはずもありませんが……。

第二は、最近、国立大で組織改編が進みワケのわからない学部が増えている謎が解けたことです。「地域」「国際」というキーワードがついた珍妙な名称の学部が新設されていることに気づいている人も多いでしょう。私もこの動きはいったい何だろうと思っていましたが、文部科学省の方針によるものだということが分かりました。詳細は本書を参照してください。

最後にタイトルについて触れておきます。毎度のことながら「大学大倒産時代」という惹句が踊っていますが、本当にそうなるのか確認する必要がありそうです。最近、読書ノートを見直していたら、佐々木俊尚 『2011年新聞・テレビ消滅」という新書を読んで当時なるほどと思ったことが記されていました。しかし実際は大手新聞社やキー局はいまだにひとつも潰れていません。大ハズレですね。

2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書)

2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書)

この本は期限を切ってないだけマシかもしれませんが、いつ大倒産時代は来るのかしっかりチェックしたいと思います。

余談ですが自分の出身大学の運命は如何にと心配になりました。生きてる間に出身大学が消滅のニュースは聞きたくありませんね。大丈夫かしらん。

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