退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

1989年の大河ドラマ『春日局』:橋田壽賀子の脚本が素晴らしい

昨年秋からHuluで見始めた大河ドラマ春日局』(全50回)を見終わりました。1989年にNHKで放送された大河ドラマ橋田壽賀子の脚本が素晴らしい。

最近の大河ドラマは隔年で女性を主人公にしていますが、誰も知らない人物を主人公にする場合、ドラマとしてイマイチなことも多いです。ちなみに今年は女性主人公の年にあたり、柴咲コウ主演で大河ドラマおんな城主 直虎』が放送されています。

女性主人公の大河ドラマの成功例は稀。今回の『春日局』は数少ない成功例のひとつであり、これ以降は『篤姫』(2008年)くらいでしょうか。春日局は歴史の中心で権勢を振るったこともあり、よく知られた歴史上のエピソードが巧みに潤色されてドラマ化されても花があります。

以下、上手いと思ったエピソードを2つ挙げます。

まずは徳川家光江口洋介)と忠長(斉藤隆治)の兄弟の確執が悲劇招く有名なエピソード。家光は生母と離され乳母・おふく(大原麗子)により厳しく育てられる一方、忠長は生母・お江与長山藍子)のもと甘やかされて育ちます。そうした伏線ののち忠長が増長して自滅していく過程が長い話数を使ってじっくりと描かれるのは圧巻です。

また家光の悲恋物語も印象深い。青年期の家光がお忍びで吉原に出かけ遊女・紫(若村麻由美)と恋に落ちます。おふくは家光の側室として紫を大奥に上げようとしますが、紫は豊臣方の武将の娘で徳川の側室になるのを拒み自害。それがトラウマになり家光は女性嫌いになり、お世継ぎ問題が顕在化します。

後日、おふくが江戸市中で紫と瓜二つの売り子を見出し大奥に上げます。やがて彼女は家光の側室・お楽(若村麻由美・二役)となり、家光との間に嫡男(のちの家綱)を儲けるが、おふくにより子どもと引き離されます。この大奥のしきたりが次の世代でも繰り返されるのは世代交代を感じさせると同時に、おふくの人生も終盤に向かっていく流れがよく描けていて唸らされます。

余談ですが女性主人公の大河ドラマには、日野富子を生涯を描いた『花の乱』(1994年)もあります。放送当時はピンと来ませんでしが、今見るとちがった思いで見ることができるかもしれません。ちょっと気になっている作品です。

【関連記事】