退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

斉藤里恵『筆談ホステス』

筆談ホステス

筆談ホステス

ロディアのメモパッドが載っている表紙とタイトルに惹かれて手に取る。聴覚障害者としての生い立ち、思春期における両親との確執、そして飛び込んだ水商売での苦労話が紹介されている。これだけ見るとどうしても暗くなりそうな話題であるが、飾らずに明るい調子で書かれているので救いがある。

そうした天真爛漫とさえ思える筆致の影には、人に言えない辛苦も舐めているのだろうが、終始前向きな姿勢はすばらしい。こういうのを接客業向きの性格いうのだろうか。

耳が聞こえないというハンディキャップを克服して「筆談術を磨くことで、夜の銀座を生き抜いてきました」というのだから敬服する。たいへんな努力家であると同時に、きっと頭にいい人なのだろう。

本書では、筆談術の一端を直筆の手書き文字で紹介している。そのなかに、次のフレーズがあった。気に入ったので書き写しておく。

立って半畳、
寝て一畳、
アソコは勃っても数インチ

すっかり乗せられて一気に読んだが、やはり夢に向かってがんばっている姿はすばらしい。少なくとも人生を生きているぞという息吹は伝わってくる。ある意味うらやましくもある。

まあ接客風景のカラーグラビア写真をみると、「やはり美人は得よのう」とも思うが、これも天の配剤というべきか。