まず経歴がユニークだ。大学の農学部に進学するも結局中退し、二輪車店、古道具屋を経て、いまでは主に料理術をテーマとした著述業で生計を立てているという経歴に惹かれる。また著者近影を見ると、長髪でヒッピーのような風貌には強烈なインパクトがある。
読者の関心は、やはりサブタイトルの「年間生活費50万円」にあるだろう。その内訳はどうなっているのか、ということだ。それは、終盤の「年間いくらあれば食べていけるのか?」(p.169)で明らかにされている。
読んでいくと。目黒に持ち家があるので家賃は不要で固定資産税と修繕費を用意しておけばいい、というのは正直、肩透かしを食らったが、それでも他の生活費は十分に安い。しかも「ガマンする節約は無意味」だと言い切っているところがすごい。生活スタイルを変えれば都区内でもそうした生活ができることを示している。
まあ実際には、勤め人には「そのまま実行できないよ」と思われることも多いが、この本の考え方から学べることは多い。とくに何でも修理して再生しまうところがすばらしい。
またエッセイのなかで、自転車に対する警鐘がココロに残る。エコ生活に注目が集まるなか通勤などでの自転車利用が増えてきたが、利用者の無謀運転や不注意によるトラブルも増えていて、ついには歩行者にケガを負わせ加害者になってしまう事例も多発し、深刻な社会問題になっている。
思い当たることはないだろうか。そもそも日本の都市部は自転車が走るように設計されていない。すぐには道路を造りかえるわけにはいかないから、当面、取締りを厳しくするしかないと思うが、ここ1,2年で大きな変化があるかもしれないので覚えておきたい。