- 作者: 塩田勉
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2001/06/15
- メディア: 新書
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この本は、“おじさん”の語学習得の実体験記ではない。語学教育の専門家である筆者が、サラリーマンがパリで暮らす孫娘に会うためにフランス語の学習を始める、という設定を借りて、物語形式で語学取得の勘所を指南する。
NHK語学講座、ベルリッツ*1を経て語学を習得していく過程を描く。さらに実際にフランスに渡り、フランス人と結婚した娘に連れられた孫娘との対面を果たすという感動の物語だ。ドラマ化決定、と叫びたいくらい。
すばらしいのは、主人公は自分の社会人生活で培った知見を適用して、自分なりの方法を編み出し、時には試行錯誤で軌道修正しながら、次第に上達していくプロセスである。この主人公はすごく聡明なので、誰もが簡単にまねすることはできないだろうが、自分自身のことや周囲の状況を適切に把握して自前の流儀を編みだすことができれば、半ば成功したのも同然ということだろう。
最終章(第6章)には、これまで物語で示した各方法論について詳細な解説し、さらに参考図書も紹介する注釈がついている。なかなか骨太な構成で、最近の軽佻浮薄な新書とは一線を画している。即効性のある方法論ではないが、語学習得の基本的に考え方について、さまざまな視点を提供くれる良書であり、元気が出る本である。
*1:主人公が個人教授を頼んで効果をあげている。メソッドやプロフェッショナルな講師たちがすばらしい。本書では、かなりの宣伝になっているが、実際はどうなのだろうか。