退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

松岡正剛『多読術』

多読術 (ちくまプリマー新書)

多読術 (ちくまプリマー新書)

筆者が編集者の質問に答えていくインタビュー形式だったので、少し警戒しながら読み始めたが意外に読みやすい。

世間でよく見かける読書術や速読術の本とは違い、具体的なメソッドを詳細に解説するのではなく、筆者の読書遍歴を開陳しながら、自身が実践している「考え方」「方法論」を示して人それぞれの読書スタイルを模索しなさいという、読者をちょっと突き放している本でもある。

そうは言っても、マーキングの実例(p.84)、セイゴウ先生の読書スタイルの写真(p.135)などは興味深いし、字典・地図・年表など、いわゆるリファ本を紹介している箇所(p.175)も直接参考になる。とくに字典について、白川静の『字統』『字訓』『字通』を使い分けているというのは面白い。

書評サイト『千夜千冊』の例を出すまでもなく、読書に臨む姿勢が超人すぎて一般人の人がそのまま参考にならないと思われる部分もあるが、筆者の本に対する愛を感じるだけでも読む価値があるだろう。

欲を言えば、本書の終盤に少し触れられているが、ネットをはじめとする新しいメディアと旧来のメディアである書籍との関連、そして今後の展望について、もう少し紙面を割いてほしかった。この分野については、別の本でということだろうが、いずれじっくり意見を読んでみたいものである。

あと「退路を断つために結婚した」というセリフを、一度は言ってみたい。