退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

トオマス・マン『トニオ・クレエゲル』

トニオ・クレエゲル (岩波文庫)

トニオ・クレエゲル (岩波文庫)

何気なしに読み直してみた。前に読んだのは遠い昔のことだが、トニオが故郷に帰って、かつて住んでいた家を訪ねる場面や、そこで指名手配の犯人に疑われたりする件は覚えていた。不思議なものだ。

『トーニオ・クレーガー』(Tonio Kröger, 1903年)ともいい、トーマス・マンの中篇小説である。表紙には、「マンの若き日の自画像であり、青春の喜び悩み悲しみを、美しく奏でた青年の歌である」とある。この小説もそうでが、若い時期に読むべき小説というのはたしかにあると感じた。

最初の舞台は北ドイツのリューベック(Lübeck)である。Wikipediaにパノラマ写真があるが、たいへん美しい街だ。この都市の歴史を眺めていると、1942年に英空軍の空襲により破壊されたとあるので、いまの街並は戦後の復興によるものらしい。ため息の出るほど見事な都市である。これを見ていると、どうして東京はこれほど雑然としているかと暗澹な気分になる。

今回読んだのは手許にあった1978年改版の岩波文庫だった。美しい日本語なのだが正直難しい。読めない漢字があったり、一読して意味がとれない箇所がいくつかあった。これは、ゆとり世代にはムリなのではと思ったら、2003年に改版されていた。書店で手に取ってみると、版組みがゆったりして、フリガナも増えていた(振りすぎかも…)。解説が追加されたこともあるが、ページ数が98Pから145Pと増えていた。岩波文庫も進化しているようだ。