退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『恐怖の報酬〈オリジナル完全版〉』(1977) / ニトログリセリンをトラックで運ぶ話。リメイク版

新文芸坐の《魅惑のシネマ・クラシックスVol.32》で、映画『恐怖の報酬』(1977年、監督:ウィリアム・フリードキン)を鑑賞。イブ・モンタン主演、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の同名作品のリメイク版。

ジャングルに囲まれた南米の辺境地。その街にはならず者や犯罪者たちがたむろしていた。ある日、その街から300キロほど離れた油田で爆発事故が起こる。石油会社は、爆薬を運び込んで爆発させ、その爆風で消火するしかないと判断。現地には扱いの難しいニトログリセリンしかない。多額の報酬をちらつかせニトロ運搬の志願者を募集する。マフィアの幹部の弟に重傷を負わせて組織に追われるドミンゲス(ロイ・シャイダー)ら4人が選出される。2台のトラックでジャングルを渡り火災現場にニトロを届ける危険な旅に出るが……。


Sorcerer (Modern Trailer)

トラックでジャングルを走破して火災現場にニトログリセリンを運ぶ行程がメインディッシュだが、運び屋たちの過去を描くパートが長いため、「危険な旅」がなかなか始まららずにイライラさせられる。

前半に尺を取りすぎ。ラストでドミンゲスが生還して新しい人生を歩みだすかという場面で、マフィアの刺客が街に現れるというバッドエンドを予感させるオチのため、演出上仕方ないとも言えるがバランスが悪い。もっとアイディア勝負でが力押しする映画のほうがよかった。この映画には、監督の許可なしに短く編集したバージョンがあるらしいが、そうしたくなる気持ちはわかる。

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今回見たのは、4Kデジタルリマスター版だったがジャングルの色彩が鮮明になっていたのは素晴らしい。底なしの泥沼、崩落寸前の吊り橋、道を塞ぐ巨大な倒木、出没する反政府ゲリラなどの困難を克服しながらジャングルを走破するシーンは見応えがある。

ラストでついにトラックが動かなくなり、主人公ドミンゲスは徒歩でニトログリセリンを現場まで運ぶ。これでミッションコンプリート。しかし昔も同じことを思ったが、「一箱でいいんかい」と。

リメイクして台無しになる映画も多いが、なかなか楽しめる。

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