退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『AI崩壊』(2020) / 医療人工知能が暴走する話。令和版『君よ憤怒の河を渉れ』との声も…

Amazonプライム・ビデオで映画『AI崩壊』(2020年、監督・脚本:入江悠)を鑑賞。『SR サイタマノラッパー』シリーズの入江が撮った娯楽映画として、封切り当時から興味があった映画。主演は大沢たかお

2030年、医療人工知能「のぞみ」は驚異的な進歩を遂げ、8割もの国民の健康管理や病気の治療、予防に利用されていた。しかし「のぞみ」は突如、暴走を始めて社会は大混乱に陥る。さらに「のぞみ」は国民の「生きる価値」を数値化して、生命の選別作業を始める。「のぞみ」の開発者である桐生(大沢たかお)は、暴走の犯人とされて当局から追跡されるが……。


www.youtube.com

この人工知能の暴走モノとしては目新しさはなく、すでにやり尽くされている分野であり凡庸といえる。ツッコミどころはたくさんがあるが、細かいことにこらわらずに楽しむのがよいのだろう。マスを対象した日本映画はわかりやすさが優先されるというが、ケレン味のない単調な話になるのはマーケットの要望かもしれない。

ネットにこの映画は、令和版『君よ憤怒の河を渉れ』じゃないかという人がいた。映画『君よ憤怒の河を渉れ』(1976年、監督:佐藤純彌)は、主役・高倉健が演じる検事が冤罪により警察に追われるという逃避劇で、カルト映画と目される昭和の映画である。

なるほどエリートが冤罪で追求を受けるという点では似てると思うが、決定的にちがうのは本作には女っ気がないこと。映画『君よ憤怒の河を渉れ』には、逃亡を助ける女たちが登場するのだが、本作ではまったくなし。その点は大いに物足りない。

映画のラストで、桐生の娘がサーバールームに閉じ込められてなかったらどうなったんだ、と思ったが、そういうことを指摘するのはこの映画では野暮というものだろう。

大衆映画としてよく出来ているので、気楽にみれる娯楽映画として悪くない。オススメします。