退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

朝ドラの最高傑作『おしん』を見終わりました

昨年秋から少しずつ見ていた朝ドラ『おしん』(全297話)を見終わった。DVDで31枚。この作品はNHKで1983年4月から1984年3月にわたり放送されたNHK連続テレビ小説第31作。原作・脚本は橋田壽賀子

朝ドラの定番である“戦中と戦後の混乱期を逞しく生きた女一代記”である。主人公を小林綾子、田中裕子、乙羽信子の3人の女優がリレー形式でヒロインを演じるという朝ドラ初の大掛かりな作品となった。それに伴い、他の登場人物も役者リレーされることになり、毎日帯で見ないせいかやや混乱した。田中美佐子浅茅陽子になったときは「えっ」と思ったものだ。

小林綾子が演じる少女時代の主人公が筏の川下り奉公に出されるシーンはあまりにも有名である。このシーンだけでも最高傑作の名に恥じない。その後の少女時代の苦労も子役ボーナスではないが胸に迫るものがある。

しかし、『おしん』の真骨頂は田中裕子が演じた青春・成年期にある。とくに結婚後、関東大震災ですべてを失った後、夫の実家で姑にいじめられシーンが印象に残る。その後、戦争で長男が戦死したり、さらに終戦後に夫に自害されたりと壮絶な人生を送ることになる。

その後、勤勉さと商才を発揮した主人公は魚と野菜を扱う田倉商店を興して財を成す。やがて子どもの世代に代替わりするあたりから、ドラマはトーンダウンしていくかに思われたが、ドラマ冒頭で老年となったおしんが家出した理由が、ドラマのなかで明らかになっていく。見事な構成で舌を巻く。

全編通して「勤勉」「家族愛」がテーマに据えられている、ひねくれ者の私などは鼻白むが、こうした横綱相撲とも言うべき直球のテーマは普遍性があるのだろう。明治時代の小作人制度や家制度など日本独特の社会背景が前提になっているにもかかわらず、海外でも広く人気を博したというのも納得できる。


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朝ドラの最高傑作と謳われる『おしん』を見て思ったことは、「橋田壽賀子は天才!」ということ。未見の人は是非見てみてください。長いけどね!