退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

コミック『土星マンション』読了しました

岩岡ヒサエのSF長編コミック『土星マンション』(全7巻)を読了。

地球全域が自然保護区となり、地上へ降りることが許されなくなった時代。人類は地球上空に浮かぶ巨大なリング状の建造物で暮らしていた。こうしたユニークな設定のSFコミック。タイトルの『土星マンション』は巨大なリング状のコロニーを土星のリングに喩えたものだろう。

土星マンション 1 (IKKI COMIX)

土星マンション 1 (IKKI COMIX)

土星マンション 7 (7) (IKKI COMIX)

土星マンション 7 (7) (IKKI COMIX)

リングは上層・中層・下層から成り、それぞれの住民の間には格差がある社会だった。主人公・ミツは天涯孤独であり、中学を卒業したばかりでコロニーの窓拭き職人となり亡父の仕事を継ぐ。仕事を通じてさまざまは経験を通じて、またいろいろな人たちとの出会いを通じて成長していく少年の姿を描く。

おだやかな日常系のストーリーかと思いきや、終盤では発電所で事故が起こり暴動に発展、さらにミツが地上に降りる決心をしたことで慌ただしくなる。

ラストでミツが地上で降りるシーンでのカラーページが印象的。映画のパートカラーのような演出で効果的だった。ここでようやく地上からリングを見上げる絵が登場する。

この作品の肝はミツを取り巻く人間ドラマなのであまり野暮なことは言っても仕方ないが、巨大なコロニーを作れるほどの科学力がありならが、なぜ人力で窓拭きやっているのだろうという素朴な疑問は払拭できない。

さらにリングでの政治や経済などの社会情勢についての言及があまりないのもSFとしては不満が残る。まあそうしたことは脇において人間ドラマとして楽しむのがいいのだろう。

実写化したらいいのに思いながら読んだが、以前そうした話があったが立ち消えになったとのこと。宇宙空間のシーンなどはお金がかかりそうだが、実写版で見てみたい作品である。

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