埼玉県議会は2021年3月末、全国で初めて事故防止のために利用者に立ち止まってエスカレーターに乗るように義務付ける条例を可決した。
埼玉県のサイトにも条例が成立したことを知らせるページがあった。正式名称は「埼玉県エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」といい、施行日は令和3年10月1日。
エスカレーターの利用者と管理者の双方に義務があるが罰則はない。
これまでも首都圏の九都県市では、「立ち止まって乗ろう エスカレーター」をテーマとしたキャンペーンが実施されてきたが、まったく効果はない。
駅を利用すればすぐにわかることだが、エスカレーターでは立ち止まる人が左側に寄り、急ぐ人が右側を移動するのが慣習化している(関西では左右逆らしい)。この罰則のないこの条例に、慣習を打破するほどのインパクトがあるとは思えない。
本気で人々の行動を変えようとすれば、サンドイッチマンのような扮装をして「安全利用」を呼びかける警備員などを大量に動員してエスカレーターの右側に立たせるぐらいの対策が必要だろう。
そもそもエスカレーター事故はどのくらい起こっているのだろうと以前から思っていたが、上の東京新聞の記事には、
日本エレベーター協会によると、2018~19年のエスカレーター事故は全国で1550件。このうち手すりを持っていなかったり、歩行中につまずいたりして転倒する「乗り方不良」が805件(51.9%)だった。
というデータがあった。
この数字だけではどのくらい重大な事故だったなのかよくわからないが、あれほどの人数が毎日利用しているにしてはさほど多いようにも思えない。
埼玉県の本気度はわからないが、少なくとも条例ができることによりエスカレーター事故で訴訟になった場合、エスカレーターを歩いていた人が不利になることは考えられる。
個人的にはエスカレーターの両側に乗ったほうが、エスカレーターの輸送能力が増えて待ち時間が短くなることが期待できるので歓迎である。なんとか「両側立ち」の普及させせる奇策はないものだろうか。