映画『風が強く吹いている』(2009年、監督:大森寿美男)を鑑賞。三浦しをんの同名小説の実写化映画。2018年にはテレビアニメ化されている。
故障によりランナーへの道を諦めた寛政大学4年生のハイジ(小出恵介)は、とある事件から走る場を追われた天才ランナー・カケル(林遣都)と出会う。ハイジは、カケルを自分が管理する青竹荘になかば強引に入居させるが、この青竹荘は休部状態の寛政大学陸上競技部の寮だった。ハイジはカケルの歓迎会で、青竹荘のたむろする個性豊かな住人たちを含めた10人で「箱根駅伝を目指す」と高らかに宣言するが……。
尺が短いので仕方ないが、メンバーたちの人間関係の描写が浅くて「青春群像劇」というには物足りない。後にテレビアニメでじっくりと登場人物を描きたいと考えたでだろう企画意図はよく理解できる。
そもそも寄せ集めのメンバーで箱根駅伝出場という難問に挑戦するのは無理があるのだが、途中までその嘘くささを感じさせないのはこの映画の美点であろう。映像面でも箱根駅伝の予選や本線の再現性は高く見応えがある。
しかしラストはどうしても納得いかない。映画的な盛り上がりを作りたかったのだろうが見事に失敗している。あと天才ランナーのカケルの超人的なパフォーマンスはもっと強調されてもよかっただろう。最大のヤマをつくるならカケルが疾走するシーンだったろう。
スポ根映画としてはまずまず及第点ではあるが、映画を見た人はぜひアニメも見てほしい。尺もちがうし後出しでズルいということもあるが、この映画の欠点をかなり克服している。見比べてみるのも一興だろう。