退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『地震列島』(1980) / パニック映画を下敷きにしたドロドロしたメロドラマ

DVDで映画『地震列島』(1980年、監督:大森健二郎)を鑑賞。大ヒットした『日本沈没』(1970年)から10年を経て撮られてパニック映画。男女の四角関係を軸にしたメロドラマを主体としてストーリーが展開する。東宝映画。

地震学者・川津(勝野洋)は、観測結果から首都直下地震の危険性を訴えるが、地震予知会ではまったく相手にされず孤立していた。川津と妻・裕子(松尾嘉代)との夫婦仲は冷え切っていて、助手の富子(多岐川裕美)との関係だけが川津の生きがいだった。他方、富子には、彼女に思いを寄せる幼馴染の橋詰(永島敏行)の存在があった。ある日、川津が予言した直下型地震が東京を襲うが……


地震列島 予告篇

せっかく首都直下型地震を描くのに大局的な描写がほとんどないのは残念。首都圏の地域ごとの被害状況や自衛隊の救助活動などがあればよかった。また地震がなかなか起こらないのも見ていて退屈。

前半1時間ほどはひたすらメロドラマが続く。そのわりには濡れ場もなく淡々を進行する。この映画は地震という舞台でメロドラマをやりたいということだろう。このようなプロットは海外映画で見たことあるような気がするが……。

勝野洋松尾嘉代、多岐川裕美、永島敏行の四人で、いわゆる四角関係を形成している。背景を説明するには尺が必要だろうし、芝居も悪くないのだが、パニック映画を期待して見ると肩透かしを食らうかもしれない。

出演者のなかでは、女優陣の存在感が強い。松尾嘉代の低い声での冷たい芝居や、多岐川裕美の美しさは必見。これに対して、勝野洋と永島敏行は、悪くはないがアクがないというか、クセがないというか朴訥していてケレン味に欠けていて面白くない。

メロドラマはともかくとして、いったん地震が起こったあとは、中野明慶の特撮が冴えていてなかなか魅せてくれる。地下鉄トンネルが浸水して死体が流れていくあたりは、雰囲気が出ていてよかった。

このDVDには中野明慶特撮監督のインタビューが特典に付いていた。このなかで、多岐川裕美がマンションで地震に遭う場面は、起震装置を使ってセットを実際に揺らして撮ったが、多岐川はセットが揺れることを知らなかったと語っていた。彼女は本当にパニックになっていたのではないかと笑っていたが、ちょっと面白いエピソードだった。