退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

急転直下で「新潮45」の休刊決まる

新潮社から、雑誌「新潮45」の休刊が発表された。10年近くにわたり毎月読んでいた雑誌だったこともあり、突然の休刊の知らせに驚いた。まさかこのような無様な最期を見るとは思わなかった。

www.shinchosha.co.jp

事の発端は、同誌18年8月号の自民党杉田水脈衆議院議員による「『LGBT』支援の度が過ぎる」という寄稿文。これがLGBT差別だと世間から一斉に非難を浴びる。その2か月後、よりによって杉田議員の寄稿文を擁護する、特別企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」を組んで大炎上に至る。炎上商売かと揶揄されるテイタラクである。

この事態を受けて、新潮社にはもう書かないという作者や翻訳者が出たり、さらに新潮社の商品は扱わないという書店まであらわれたりした。そして新潮社に抗議する人たちが集まり、器物損壊騒ぎまで起きる始末となる。ここまで事態が悪化すると、経営的には雑誌を休刊してリセットするしかなかったのだろう。

f:id:goldensnail:20180926005949j:plain

ただ「新潮45」と言えども名門出版社の冠をかぶった言論雑誌である。休刊前に誌面上で今回の騒動を調査したうえで総括してほしかった。上の「休刊のお知らせ」では以下のようにコメントしている。

しかしここ数年、部数低迷に直面し、試行錯誤の過程において編集上の無理が生じ、企画の厳密な吟味や十分な原稿チェックがおろそかになっていたことは否めません。その結果、「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現」(9月21日の社長声明)を掲載してしまいました。このような事態を招いたことについてお詫び致します。

しかしこれだけでは、何が「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現」なのか不明瞭だし、社内で何があったのか、問題の本質はどこにあったのかさっぱりわからない。

休刊が決まったいまでとなっては、できることと言えば別途単行本に一連の事態の顛末、そして出版社の今後の姿勢をまとめて世に問うことだろう。これが大手出版社としてせめてもの挟持というものだろう。

また雑誌連載の打ち切りは世の常なので仕方ないことだが、せめてストーリーのある長編コミック『プリニウス』だけは、他誌で続きが読みたい。これだけは、なんとかしてほしいとお願いしておきたい。

さらば「新潮45」。