角川シネマ新宿の《大映創立75年記念企画 大映女優祭》で、映画『夜の素顔』(1958年、監督:吉村公三郎)を鑑賞。新藤兼人のオリジナル・シナリオ。
旧軍の慰安の踊り子だった朱美(京マチ子)は、戦後、日舞の小村流の家元・志乃(細川ちか子)に弟子入りする。そのなかで美貌と才覚のみならず、色仕掛けや泣き落しなどあらゆる手段を使ってでのし上がり、師匠の志乃との間に確執が生じる。師匠を蹴落とした朱美は、独立して新しい流派を立ち上げ家元としての地位を確立。さらに勢力を拡大させようと奔走するが、その座を狙う内弟子・比佐子(若尾文子)の姿があった……。
京マチ子の女一代記にはちがいないが、逞しいというか酸いも甘いも噛み分けている強い女性という役柄なので「哀しい女一代記」というイメージからはほど遠い。最後まで見てもどうもスッキリしない。
京の野望が若尾が打ち砕だかれて、京が「ぐぬぬ」となるのかと思いきや、舞台公演の途中で急死してしまって拍子抜けする。志乃→朱美→比佐子という流れで、因果応報を描くのかと思ったが中途半端な終わり方だった。
ラストで「ヤマトタケル」のような演目の演舞があった、オーケストラに邦楽が加わった豪華な音楽が流れる。どんな演目なのが気になったが途中で主演の急死により打ち切られたのは残念。もう少し京マチ子と若尾文子の踊りを見たかった。
この映画は京マチ子と若尾文子の対決が見どころ。若尾は赤線上がりの悪女という設定だがまだまだ甘い。京が強すぎるころもあり劇中の若尾では対抗できそうにない。ふたりのバランスをとって若尾の役どころを考えてほしかった。