退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『ブレイブ ストーリー』(2006) / ジブリになれなかった長編アニメ映画

DVDでアニメ映画『ブレイブ ストーリー』(2006年、監督:千明孝一)を鑑賞。原作は宮部みゆきジブリ作品で成功していた日本テレビを横目に、フジテレビが新たにアニメ映画に進出した作品。ジブリ作品と同様に声優ではなく、松たか子らの俳優やコメディアが主要キャラクターに起用され話題になった。

11歳の少年ワタル(松たか子)がバラバラになった家族を取り戻すためにファンタジーの国「幻界」に踏み出すというストーリー。

原作は未読だが、全編にわたりダイジェストを見せられているようでストーリーのつながりがわかりにくい。「長編小説を2時間にアニメにまとめるのは無理がある」という声が多いのできっとそういうことなのだろう。三部作ぐらいにしてじっくり作ってほしかった。

それでも劇場用アニメらしい金のかかっていそうな作画は素晴らしい。フジテレビの意気込みが伝わってくるようなクオリティーだが、次弾がなかったのはどうしたことだろう。

ただしストーリーは、子ども向けなのか、それとも大人の鑑賞にも耐えられるものを狙ったのかよく分からずに中途半端な印象を受ける。細かいことを言っても仕方ないが、アタルの父・明(高橋克実)の扱いがひどいのが中年男性としては納得できない。ちなみに、アタルの母は元・キャンディーズのスーちゃんこと田中好子が演じている。

冒険前の現実世界では、明は別の女と暮らすと言って妻子を捨てて家を出る。さらに「幻界」のなかでも、幻として登場し「大人を捨てる。夫を捨てる。父を捨てる。それでもいいじゃないか」「自分だけのために生きる」という内容のセリフをアタルに向かって言い放つ。まあ大人を捨てちゃまずいが、正直あとは別にいいじゃねと私なんかは思わなくもない。

このアタルと父の相克がどのように回収されるかと思ったが、アタルが「幻界」から現実世界に戻ってきたあとは、父は完全にスルーされていなかったも同然の扱い。なんだかなぁ~。

その点において、大人が見ると物足りないし、子どもには重たい内容になってしまったのではないか。単純に活劇としては十分に楽しめるので、ずっと小さい子どもにはいいかもしれない。


BRAVESTORY~予告編~ - YouTube

杉並アニメーションミュージアムに展示されていたアタルのフィギュア