退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『夏の庭 The Friends』(1994) / 少年たちのひと夏の物語

シネマヴェーラ渋谷の《相米慎二を育てた男 プロデューサー伊地智啓の仕事》という企画で、映画『夏の庭 The Friends』(1994年、監督:相米慎二)を見てきた。湯本香樹実の児童小説の映画化。3人の少年と老人の交流を描くドラマ。併映は、映画『お引越し』(1993年)だったので、子どもシリーズ二本立だった。

舞台は神戸。人の死後に興味を抱いた3人の小学生6年生は、近所の朽ちた屋敷に住む変わり者の老人(三國連太郎)がいまにも死にそうだということで観察することにする。当初、老人は少年たちを邪魔に思い追い払うが、老人と少年たちは次第に親しくなっていき、少年たちは庭や家の手入れを手伝うようになり、老人は戦争や別れた妻のことなど自分の過去を語り始める。

ラストは悲しい。少年たちがいつものように老人の屋敷を訪ねると、すでに老人はこと切れていたという結末である。少年たちのひと夏の物語。老人の死後、屋敷がみるみるうちに朽ちていく表現は、監督の死生観の表れだとするのは深読みすぎるだろうか。

三國連太郎は、撮影当時70歳ぐらいなので実際の年齢よりは年老いた役を演じていたのだろうが、演技が円熟の域に達しているので、歳のことは気にならない。 とにかくオーディションで選ばれたという演技経験のない少年たちとの掛け合いがすばらしい。

また少年の先生役(老人の孫でもある)を戸田菜穂が演じていることにも注目したい。彼女の映画デビュー作らしいがさすがに初々しい。戸田を見ると、本作が20年前の作品であることを確認できる。女優にとって時の流れは残酷だなというと怒られるだろうか。

f:id:goldensnail:20150608185546j:plain