退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『雪の断章 -情熱-』(1985) / 斉藤由貴の幻の初主演作

シネマヴェーラ渋谷の《相米慎二を育てた男 プロデューサー伊地智啓の仕事》という企画で、映画『雪の断章 -情熱-』(1985年、監督:相米慎二)を見てきた。

佐々木丸美原作の『雪の断章』の映画化。公開当時の同時上映は『姉妹坂』(監督:大林宣彦)だった。斉藤由貴の初主演作にもかかわらずDVD化されていない幻の作品。原作者は映画を気に入らなかったそうだが、それがDVDが出ない理由だろうか。

舞台は札幌。孤児だった夏樹伊織(斉藤由貴)は里親のもとで暮らすが、いじめられているのを見かねた男(榎木孝明)に引き取られて、彼の親友(世良公則)とともに二人の男に囲まれて成長する。その後、唐突に殺人事件に巻き込まれ、ラストでは事件の真相がわかり自殺者が出るというアイドル映画にしてはハードな内容。
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アイドル映画らしくない作品だが、伊織がボーイフレンドのバイクの後ろでのけぞっているシーンで、カセットテープ「AIXA」のイメージソングだった名曲「情熱」(作詞:松本隆/作曲:筒美京平)が挿入歌として流れる。主人公はバイクに乗ったりするキャラクターではないと思ったのだが……。また突然大音量で音楽をかけて踊り出すシーンものもちょっと違うのではないか。
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印象に残るのは、伊織がセーラー服のまま豊平川をざぶざぶと歩いていくシーン。アイドルにすごいことやらせるものだと絶句。他にもテトラポットの上を歩いて行くシーンも落ちそうでハラハラさせられる。相米監督は容赦ない。

全体的はファンタジーな作品なので、現実と重ねないで見るのがいいだろう。原作は未読だが脚本には伊織の人物描写にいろいろ問題があるような気がする。それでも相米慎二監督の作風は楽しめる。何よりポニーテールの斉藤由貴のセーラー服が最強だと確認できるだけでも、映画化の価値があっただろう。
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※ソフト化されました