退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

「大阪都構想」住民投票で思ったこと

17日、注目を集めた「大阪都構想」の是非を問う住民投票が行われ、僅差ではあるが反対多数となった。この結果により大阪都構想は廃案となり、政令都市としての大阪市がこれまでどおり存続することが決まった。

今回の住民投票は、有権者数が210万人を越える国内で最大規模の住民投票で、投票率は66.8パーセントだった。投票率が高かったというコメントも多いが、正直、120年もの歴史をもつ大阪市が廃止されるかもしれない重大なイベントにしては低かったように思う。

投票率はおよそ3分の2で、賛成、反対がほぼ拮抗していたので、賛成した人、反対した人、投票しなかった人が、それぞれほぼ3分の1ずつだったことがわかる。もう少し投票率が高ければ結果は変わっていたかもしれない。

私は都民だが、大阪市は新入社員研修を受けた街であり、その後もしばらく関西で働いていたので、多少は思い入れがあったので今回の住民投票は関心を持って見ていた。なので投開票日も開票結果を追いかけたあと、遅くまで続いた橋下市長の記者会見も最後まで見てしまった。眠い。

以下、今回の住民投票で思ったことを書いてみたい。

高齢者パワー炸裂か!?

多くの人が指摘していることだが、出口調査からわかった世代別の投票行動に注目したい。70代以上の「反対」が他の世代に比べて際立って多く、それに対し30代、40代は改革を求めていたということだ。

もっとも出口調査には期日前投票は含まれないことに注意が必要だろう。厳密には、組織票が多く含まれるだろう期日前投票の世代別の票数が分からないと全体の投票行動を解明することはできないので、今後の分析が待たれる。

それにしても、以前より指摘されていることだが高齢者は人口構成比も高く、投票率も高いということが明確になったということは言えるだろう。「世代間闘争」というと大げさかもしれないが、民主主義が最良とは言い切れないことがはっきりしたようにも思う。

二重行政で何が悪い

今回の「大阪都構想」は大阪市大阪府の二重行政を無くすことが目的だった。しかし根本的には、二重行政はなぜ悪いことなのかという疑問がある。

大阪市民としては、市と府の双方から行政サービスを受けることができ万々歳ではないか。市民が投票したら現状維持でいいと言うのは自明ではないか。もっとも本当に財政破綻して行政サービスが悪化すれば困るのだろうが、大阪がゆっくりとジリ貧になって緩やかな死を迎えるなら、年齢によっては逃げ切る可能性も高い。

しかも仮に財政破綻しても周辺自治体に引っ越せばいいだけだ。もちろん賃貸主義の身軽な立場だから言えるのかもしれないが、東京で言えば、都心にアクセスできれさえすれば住むのはどの自治体でも構わないということだ。

今回、現役世代の多くが都構想に賛成していたのが意外だった。東京からは分からない地元の温度というものがあるのだろうか。

橋下劇場の終焉なのか

住民投票の結果が出たあと、2時間ぐらいの記者会見があった。これまでのメディアへの攻撃的な態度を含め毀誉褒貶の多い政治家ではあるが、この記者会見での橋下市長は飄々として、やり切ったという感じが出ていた。小気味よい印象すら受けた。

そのなかで橋下徹大阪市長は、市長の任期を果たした後は政界からの引退することを名言した。7年半に渡りメディアに多くの話題を提供してきた橋下劇場の終焉である。しかし本当にこれでオワリなのだろうか。

市長の任期を終えたあとは弁護士業に専念すると語っていたが、いずれ国政に参画するような気がしてならない。それまでの間、大阪での政治経験をまとめて自伝を書いて一儲けしてはどうだろうか。読んでみたい人は多いと思うのだが。

組織のないところから初め、都構想を問う住民投票まで7年半で漕ぎつけたのだから大したものだ。

今日はこれくらいにしておきましょう。ごきげんよう

「橋下徹」ニヒリズムの研究

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