菅義偉官房長官は、4月5日に沖縄基地問題に関連して翁長雄志沖縄県知事と会談したとき、政府が普天間飛行場の移転を「粛々と進める」とくり返して述べていたことを、「上から目線」だと批判された。これを受けて官房長官は、「今後は使わない」と表現を改めることになった。
そもそも「粛々」という語はどういう意味だろう。手元の「広辞苑」や「大辞林」を参照すると、次のような語義が載っている。
- しずかなさま
- おごそかなさま
- つつしむさま
本来の用例としては、「式典は粛々と進行した」「葬列は粛々と歩む」のような使いかたが一般的であろう。「上から目線」というのはまったく当たらないように思う。官房長官には知事に対して「どうしてそう思うのか」聞いてほしかった。
しかし政治家が沖縄基地問題で「粛々と進める」という表現をあまりに多用したために、本来の意味から離れて「反対する人や困る人がいても構わず進める」という色がついてしまい、もはや政治家でなくても安易に「粛々と」という言葉はつかいにくくなった。
「言葉は生き物」とよく言うが本当にそうだなと思った。