退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『薄化粧』(1985) / 松本伊代ちゃんの太ももが見られます

新文芸坐の《五社英雄映画祭》で、映画『薄化粧』(1985年)を鑑賞。妻子を殺した上に刑務所を脱走した男の逃亡生活を描く。五社監督の文芸路線の一作。

逃亡犯を演じるのは緒形拳。緒方は『復讐するは我にあり』(1979年)にも出演しており、その二番煎じという気がしないでもない。それでも連続殺人犯がよく似合っているし、本当に人を殺しているように見えるのは怖いほどだ。この映画では、ラジオを壊わされたことに逆上して妻を殺してしまうシーンがとくに印象に残る。

ちなみに「薄化粧」という題名は、主人公が付き合っていた女に眉墨を引かれたのをきっかけに、鏡の中には別の自分がいることに気づくことに拠る。それ以来、外出するときには変装を兼ねて化粧することになる。

さて個人的な興味としては、この映画は松本伊代が出演していることが特筆できる。彼女は「82年組」のひとりだから、デビュー3年目で「ポニーテイルは結ばない」を歌っていた頃だろうか。

伊代ちゃんの太もも(細いけど)ちらりのお宝映像が見られるのは貴重。本作では役者としては未熟だが光るものもあったように思う。歌手と同様にひと言でわかる特徴のある声は役者としても強力な武器だ。役者に方向転換していれば、いまとは違った展開があったのではと思うのだが……。

ラストでは「この話は実話である」というテロップがドーンと出てる。いまで言う「Based On True Story」だろうが、フィクションと言わないところに時代を感じる。インパクトのあるエンディングである。

この映画はどうしても『復習するは我にあり』と比べてしまう。今村昌平五社英雄との対比を考えながら見比べるのも一興であろう。

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