退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『パークランド ケネディ暗殺,真実の4日間 』(2013)

新文芸坐で映画『パークランド ケネディ暗殺,真実の4日間 』(2013年、監督:ピーター・ランデズマン)を見てきた。1963年、テキサス州ダラスでパレード中に起きた〈J・F・ケネディ大統領暗殺事件〉のため人生が一転した男たちを軸に描く群像劇。

群像劇に取り上げられるのは、偶然暗殺事件の瞬間を撮影したアマチュアカメラマン、大統領の救命処置を懸命に行った当直医、警護を担当していたシークレット・サービスのチーフ、暗殺事件の容疑者オズワルドの兄、容疑者をマークしていたFBI捜査官などである。

ちなみに「パークランド(Parkland)」というのは、狙撃された大統領が搬入された病院名。奇しくも暗殺事件の容疑者オズワルドが射殺されたときも、この病院に運び込まれている。

この映画ではよく語られる陰謀説とは無縁なので、暗殺の背景が明らかになるわけでもない。淡々と事実に沿って群像劇が進行するので娯楽性は乏しい。そしてエンディングでは登場人物のその後の人生が紹介されるという、史実を基にした映画によくあるパターンなのもやや不満が残る。

それでもディテールにおいて興味深いシーンがあったので3つ紹介する。

第一は、大統領の遺体を病院がからワシントンに搬送するときに、テキサスの監察医が「検視が済むまで遺体を動かすな!」と言うシーンである。完全に嫌がらせなのだ。シークレット・サービスも「これは連邦犯罪だ!」と半泣きで遺体を運び出す。南北戦争のしこりだろうか。

第二は、大統領の遺体を納めた棺桶を大統領専用機に運び入れるシーンだ。当然ながら棺桶を運ぶことは想定されていないため、あわててシートを外したり、機内の壁を壊したりして棺桶を搬入する場面は臨場感があった。

第三は、暗殺事件の容疑者オズワルドの葬儀のシーンである。神父はいるものの周辺の教会に葬儀をすべて断られて寂しい埋葬だ。棺桶を運ぶ人もおらず、容疑者の兄は取材に来ていたメディアの人に手伝いを頼み、依頼された側もさすが断らずに棺を埋葬する場面がちょっといい。

上映時間93分と尺が短くテンポよく展開するので飽きずに見られるが、「で、だから何なの?」という気もする。アメリカ人にとっては、この事件は特別の思い入れがあるのかもしれないが、そうではない観客にとっては「どうでもよくね」と思わないでもない。

この事件に興味があり、ちょっと真面目は映画を見たい気分の人にオススメしたい。


Parkland Official Trailer #1 (2013) - JFK ...