目黒シネマで、大林宣彦監督作品の2本立てを見てきた。
- この空の花 -長岡花火物語 (2012年)
- 野のなななのか (2014年)
どちらも3時間近い長尺なのに加え、映画からの情報量が圧倒的に多い。なので、この2本立てのプログラムは無謀ではないかと思ったが、上映機会が少ない作品なので力を振り絞って見てきた。どちらも反戦・反原発のメッセージが打ち出されているが、プロパガンダ映画特有の嫌味は感じられない。映画そのものの魅了が強いせいだろう。
この空の花 -長岡花火物語 (2012年)
舞台は新潟県長岡市。1945年の長岡空襲と戦後の長岡花火への住民の思いを描いた作品。長崎の女性記者(松雪泰子)が長岡を取材で訪れるとう紀行ドキュメンタリー風の映画になっている。
- 出版社/メーカー: ビデオメーカー
- 発売日: 2014/04/08
- メディア: DVD
元恋人(高嶋政宏)からの手紙に引きせっれるように、東日本大震災の被災者をいち早く受け入れた長岡を取材するこのになった女性記者を中心に進行する。高島が勤務する高校で、一輪車に乗る謎の女子学生(猪股南)が書いた戯曲『まだ戦争には間に合う』を舞台化することになる。一輪車の不思議な動きが新鮮だ。
圧巻は、劇中劇として上演される『まだ戦争には間に合う』の場面。合成映像バリバリですごいことになっている。大林監督の映像センスが集約されているかのような映像で戦争を描く。これを見るだけでも出かける価値があろう。
実は、この映画を見るのは2013年夏に見て以来2回目。初見のときは分からなかったことが見えてきた。初めて見る人にとっては、字幕によるこれでもかという情報過多な演出などが受け入れられにくいというおそれはある。DVDで繰り返して見るのがよいのかもしれない。とは言うものの映画館の暗いなかで見る花火の映像も捨てがたい。
野のなななのか (2014年)
北海道芦別市が舞台。92歳で亡くなった男(品川徹)の葬儀で顔をそろえた遺族が、ある女性(常盤貴子)の来訪を契機にその男の知られざる過去を知るというドラマ。旧ソ連の樺太侵攻での戦争体験が死者たちによって語られるという趣向。
こちらは会話劇。冒頭、早口のうえセリフが被る会話劇が続く。演劇的というのだろう。しかも会話が微妙に噛み合っていないというおそろしい導入部。ここで脱落する人も多いだろう。この映画を見るのは初めてだったが、1度見ただけではわからないというのは大林作品としてはいつものことだが。
ちなみに「なななのか」というのは、仏教の「四十九日法要」のこと。クライマックスで野原で参列者が弁当を囲むシーンがあり、タイトルが回収される。死者と生者が混在した芝居で会話が分断されているなど凝ったつくりになっている。ここまで辿り着いた観客ののみが享受できる大団円であろう。道のりはながい。
まとめ
2本立てで満腹になった。食い過ぎだ。やはり2本立ては無理がある。ロビーに大林監督作品のポスター展があった。少し軽く短い作品と組み合わせてプログラムを組んでほしかった。長編デビュー作『HOUSE ハウス』(1977年)のポスターが鎮座してたが、併映作としてよかったのではないか。
観客を選ぶということもあるが、今回の作品はどの映画とも違うという点で貴重だ。こういう独自の世界を持つ監督が映画と撮れる環境を素直に喜びたい。デジタル技術を得てますます意気軒昂な監督の未来に幸多かれ、と思った次第です。