退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『源氏物語 千年の謎』(2011) / 冒頭いきなり中谷美紀がバックから…

この映画では、『源氏物語』の作者である紫式部中谷美紀)が、長女彰子を入内させた藤原道長東山紀之)と男女関係にあり、道長が帝の関心を彰子に向けるために式部に『源氏物語』を執筆させる、という設定である。リアル世界の紫式部の「式部の物語」と、『源氏物語』のなかの「光源氏の物語」が同時に進行するという凝った構成になっている。

こうした構成から思い出すのは、吉永小百合紫式部を演じた映画『千年の恋 ひかる源氏物語』(2001)である。さすがに研究したのだろうか、本作は前作よりいろいろな面でマシになっている。それでもいまどちらの物語にいるのか分かりにくい。DVDのチャプターも物語ごとに分割されていないので余計に混乱する。

さて配役であるが、「光源氏の物語」では、光源氏生田斗真が演じている。登場する女たちは、藤壺中宮・桐壺更衣を真木よう子、葵の上を多部未華子、夕顔を芦名星、そして六条御息所田中麗奈がそれぞれ演じている。女優陣の配役はもっと適役がいるのではないかとも思うが、ジャニーズのファンは大喜びなのだろう。

映画の冒頭、いきなり野外で式部を道長がバックから攻めるシーンから始まる。源氏物語と言ってもハーレクイーンと大して変わらないと思うので愛情描写に期待が高まるが、映画全編を通して大したことはない。R-15指定覚悟で思い切って撮ってほしかった。

まあ御息所が生霊になる場面は香港のホラー映画のような演出だったり、源氏物語なのに安倍晴明窪塚洋介)が登場したり、いろいろオカシイのだが、目先が変えて飽きさせない工夫なのだろう。

映画としてはどうかと思うことも多いが、絢爛な平安絵巻を現代的な映像技術で表現できているのは悪くない。公開当時、映画館に観に行こうかとも思ったが、DVD鑑賞で正解だったというべきか。名画座で上映されたら、中谷美紀様を愛でるため、そして平安絵巻の映像美を楽しむために足を運ぶかもしれない。