安倍首相は、15日に記者会見し、集団的自衛権の行使を検討する考えを表明した。従来、政府による憲法解釈では集団的自衛権は憲法第9条により禁じられているとしてきたが、ついに安倍ちゃんは安全保障政策の大転換を宣言し、公然と解釈変更に強い意欲を見せた。将来、日本が誤った選択をした場合、5月15日がターニングポイントとして思い起こされるだろう。
首相記者会見のポイント
会見の様子は下のとおり動画配信されている。
憲法は個別集団を問わず自衛権の行使を禁じていない・安倍首相が安保法制懇報 ...
また首相官邸のサイトでは書き起こしも参照できる。しかし会見を見ても、最終的に何をしたいのかさっぱり分からないが…‥。
毎日新聞によれば記者会見のポイントは次の通り。
- 限定的な集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更を検討し、与党協議を開始
- 解釈変更が必要と判断されれば、改正すべき法制の基本的方向を閣議決定
- 武力行使を目的とした集団安全保障には参加せず。平和主義を守り抜く
- 武力攻撃に至らない侵害など「グレーゾーン」への対処を強化
- 現行解釈で対処できない邦人輸送中の米艦船防護や「駆け付け警護」を可能とする
Source: http://mainichi.jp/select/news/20140516k0000m010096000c.html
ポンチ絵によるケーススタディ
今回の記者会見で特徴的だったのは、演台の左右後方にポンチ絵(パネル資料)を置いて、適宜それを指しながら説明していたことだ。そのポンチ絵は次の2枚。いずれも現行法規では対応できないという。
- 周辺有事の際に在外邦人を輸送中の米軍艦船の防護 (米国民らしき人も乗船しているのがミソ)
- 国連平和維持活動(PKO)に参加中の自衛隊が離れた場所にいる日本のNGO職員などを救援する「駆け付け警護」
パネルを使うとは「池上彰かな?」と思ったが、たしかにわかりやすい。これらの事例については、在外邦人保護の立場から理解を得やすいし、正面きって反対できる人は少ないだろう。いわゆる武力行使を伴わないグレーゾーンの範疇に入る事例である。議論の入り口としてはなかなか巧妙である。
しかし、これは本当に憲法解釈を変更しないと実現できないのかという疑問がある。現行法の改正では無理なのだろうか。都合のよい事例を挙げて、これらを蟻の一穴にして憲法解釈を既成事実化しようとするつもりではないかという疑念が拭えない。
ケーススタディを積み上げて問題点を明らかにしていくという方法はよいのだが、どうしても政府にとって都合のよい事例しか表に出てこないのではないかいう懸念がある。今後、どのような事例が国民に提示されるのかという点がポイントかもしれない。
怖かった記者会見
今回の首相記者会見を見て背筋が寒くなった。安倍ちゃんがあまりにノリノリだったからだ。原稿を読まずに生き生きと自分の言葉で語っていて、何度もリハーサルしたことが透けて見える。
不気味だ。きっと経済などどうでもよくて、安全保障関連の懸案が安倍ちゃんのなかでは最優先事項なのだろう。そして旧体制を破壊することで歴史に名を残すことに使命感を燃やしている、と見えてならない。