退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『共喰い』(2013)

新文芸坐で映画『共喰い』(2013年、青山真治監督)を鑑賞する。原作は田中慎弥芥川賞受賞作だが未読。今回の目当ては併映の『ペコロスの母に会いに行く』。

舞台は昭和63年の山口県下関市。一見して昭和30年から40年代かと思ったが、地方ではこんな感じだったのかと無理やり納得する。陰鬱な雰囲気がよく出ていて映像は引き締まっている。

主人公の17歳のイケメンくん(菅田将暉 )はガールフレンドの千草(木下美咲)とやりまくっている。このリア充にはまったく共感できないなと思っていると、性交の際に女を殴りつける性癖を持つとんでもない父親(光石研)が登場する。いつか自分も千草を殴るのではないかと怯えるイケメンくん。こうした性癖は遺伝するわけもなく、文学によくある父子の葛藤のようなテーマにやや陳腐な印象を受ける。

また映像表現も、釣り竿=ペニス、川=女性と言ったありきたりの暗喩が寒々しい。小説にも同じ比喩があるのかわからないが、小説ではアリでも映画にそのまま持ってきてもどうなのだろう。

出演者ではイケメンくんの母親・仁子を演じた田中裕子がよい。夫の暴力が原因で家を出て一人で魚屋を営んでいる。片手を戦争で失い特殊な義手を使っているという設定が活きている。映画オリジナルのラストらしいが、終盤の琴子の行動で映画の幕引きになる。美味しいところは田中裕子が全部持っていったなあというエンディングである。さすがに存在感がある。

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映画『共喰い』予告編 - YouTube

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