この本は、公共図書館が抱える問題と様々な取り組みを紹介する、現場取材に基づくルポルタージュである。
つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)
- 作者: 猪谷千香
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/01/07
- メディア: 新書
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ここ数年、図書館の閉館日が少なくなったり、開館時間が延長されたりしていることに気づいていた人も多いのではないか。また図書館業務が外部にアウトソーシングされていることを含めて、今日の図書館が直面している現実を理解できる。
この本で取り上げられている図書館はどれも興味深いが、やはり蔦屋が管理する武雄市図書館が気になる。メディアにも頻繁に取り上げられていたが、この本を読んでなるほどと思うことが多かった。図書館の本と販売する本が近くにあって混乱しないのかという疑問も解消した。蔦屋が今回のシステム開発に投じた費用を回収するには、もっと多くの図書館で指定管理者になる必要があるそうだ。それはそうだろう。今後、全国で“蔦屋図書館”が見られることになりそうだ。
一方、上記の武雄市図書館の対照として近くに立地する伊万里市民図書館を取り上げていて、図書館の理念を頑なに守る図書館もあることを紹介しているのは好感が持てる。
紹介された図書館のなかにはうらやましいと思える施設も多くあったが、図書館が大きく変われる要因は何であろうか。住民の意識だろうか、それとも区役所職員の企画力だろうか。公共図書館が「無料貸本屋」を超えて地域コミュニティの核となれるかどうかの分かれ目はどのあたりにあるのか。そんなことを考えてみた。
旧来の「無料貸本屋」としての図書館も悪くないと思うが、ベストセラー本をバカほど揃える必要あるのかな、とはいつも思う。うちの図書館では、百田尚樹の『海賊とよばれた男 上』を50冊以上所蔵して、予約数1000件超えだ。もうアホかと……。