退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

「二・二六事件」二本立て:『226』『叛乱』

先週、新文芸坐で「二・二六事件」の映画の二本立てであったので観に行った。「“歴史ブーム!”映画で見る日本史」という企画。

一本目の「226」は、とても商業的な映画で、これで本当にいいのだろうか、とまず思う。歴史的背景がまるで描けていないので、昭和維新や尊皇討奸といった言葉が空々しく感じられる。決起の大義が描かれていないのが致命的。このテーマは思想なき映画ではいけないだろう。

そして萩原健一三浦友和竹中直人本木雅弘をはじめとする青年将校たちのキャスティングも豪華だが、これに負けずに、女優陣にも安田成美、有森也実南果歩名取裕子藤谷美和子賀来千香子といった当時の人気女優が配役されている。女優たちにそれほど見せ場あるのかなと思いながら観ていると、銃殺のシーンでの銃声ごとに挿入される安直なカットバックに象徴される“家庭人としての青年将校”を過剰に強調する演出にめまいを覚える。まあ、安田成美の敬礼シーンにはノックアウトされたが…。女優を出せば売れるだろうという下心が透けて見えるのは興ざめ。

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二本目の「叛乱」ではテロップでの説明が多いものの統制派と皇道派の対立などの背景が抑えられているし、製作年から軍隊経験者が多いせいか、エキストラが演じる兵隊が本物らしくみえるような気がする。こちらのほうが好みだ。

ただ史実を真面目になぞっているせいか映画的な躍動感には欠けるが、心理劇中心で物語が展開し、青年将校たちの内面を描く演出は緊張感が感じられる。だがせっかくの登場人物が生かされていないようにも思う。終盤、銃殺刑のシーンが長くは鬱々とした気分になるが迫力はある。処刑前、北一輝に「天皇陛下万歳」をするように誘われて、西田税はそれを断るシーンがある。これは史実なのかわからないが、いろいろ考えさせられるシーンだった。

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最後に、以前二・二六事件を自分で短くまとめた文書が出てきたので稚拙ながら貼っておく。

二・二六事件は、1936年2月26日に発生した旧陸軍・青年将校によるクーデーター未遂事件である。経済恐慌や飢饉による農民や一般庶民の困窮を憂う皇道派の一部が、腐敗堕落した政治勢力から国家を奪還し天皇親政による「昭和維新」を目指し蜂起した。しかし皮肉にも奉勅命令により「逆賊」の烙印を押され、わずか4日間で鎮圧される。この反乱は要人殺害後の政治目標が明確でなく偏狭で独善的であり、殺人テロと言っても差し支えない稚拙なものだった。この事件は陸軍の派閥抗争に重大な影響を与え、事件後、皇道派は軍中央から一掃され代わって東条英機ら統制派が実権を掌握した。さらには組閣人事など政治への露骨な介入を招き、政治の主導権を与える好機となり、軍部独走を許す事態となった。翌年日本軍は中国への侵略戦争を始め、対米英戦争へと拡大していく。この事件は、「戦争へ道」への歴史的転換点として位置づけることができる。