- 作者: 池田信夫
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2009/10/09
- メディア: 単行本
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「よい国をつくるには」「みんなが幸福になるには」というような人間的な要素を考慮せずに、日本経済の停滞の原因を冷徹に分析し経済の効率のみを追求しながら、日本再生への道筋を展望する。「規制緩和が所得格差を生んだ」「終身雇用は、日本の伝統だ」といった常識が本当はウソであること指摘しているところは興味深く読んだ。
なかで印象に残ったのは雇用問題である。経済再生のためには、正社員の解雇条件を緩和して労働市場の流動性を高めて産業構造を変革していくことが重要だという。しかし正規労働者の既得権を持っている年齢層は簡単に特権を手放そうとしないし、少子化の影響で人数が多く政治的な影響力も強い。
そうなると、その世代が舞台から退場するまでは政治的にも解決できそうにない。とにかく時間がかかりそうだ。それまでに時間切れになり日本が疲弊しきってしまわないか懸念される。どの世代まで「逃げ切れる」のだろうか。
通読して、日本経済が抱えるさまざまな問題が整理できたが、日本経済の将来展望は暗いなという認識を新たにした。日本の中長期的な凋落は確実なように思われるが、気になるのはその落下速度だ。「希望」はとっくに捨てている。逃げ切れるかどうか、また逃げ切るにはどうしたらよいのか、ということがもっぱらの関心事である。