早稲田松竹で「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」(2009年、根岸吉太郎)を見る。太宰治の短編「ヴィヨンの妻」をベースに、太宰の他の作品の要素を加えたオリジナルストーリー。
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2010/04/07
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意外にまっとうな映画。監督をはじめ、太宰の短編から2時間の作品を作り上げた脚本の田中陽造や、終戦当時の中央線沿線の様子を再現した美術の種田陽平がすばらしい。かつての日本映画の伝統を感じさせる、と言ってもよい。
出演陣では、松たか子と浅野忠信の夫婦は、さすがというか安全牌というか、まあこんなところかという感じで無難なところ。
配役をみて不安だったのは、浅野の愛人を演じる広末涼子。当初、いつもの舌足らずの台詞まわしをハラハラしながら観ていたが、意図していたのか偶然の産物かわからないがビジュアル的にはなかなか魅せる。心中未遂後、警察の廊下で妻の松と擦れ違う時に、ふっと笑う場面にはぞくっとする。
まあ、広末の濡れ場はもっと激しくてもよかったとも思うが、製作側の大人の事情があるのだろうか。作品的には、ちょっと残念。
太宰の作品に親しんでいる人は、場面ごとに出典に思いをめぐらせながら観るのも一興かもしれない。文芸作品だからと敬遠している人にもおすすめしたい。