先日、新文芸坐で開催された森繁久彌の追悼企画で「小説吉田学校」(1983年、森谷司郎)を観た。森繁久彌が演じる吉田茂の伝記映画。
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吉田茂について、それほどしっかりとしたイメージを持っているわけではないが、森繁久彌は教科書や映像でみる吉田茂そのものだった。
前半は、後進の人材の育成に心を砕き、サンフランシスコ講和条約締結に邁進する姿はカッコいい。本来ならば表舞台に出る人ではなかったかもしれないが、お鉢がまわってきて見事に大願を成就する。講和に臨み「まずは日本の独立が大事。10年、20年先まで、そののままではいけない」といったことを述べていたが、現在も基本的には当時の体制がそのままであることを考え合わせるとなかなか印象深い。
後半は、鳩山派の三木武吉(若山富三郎)との派閥抗争が描かれる。まるで東映やくざ映画のような展開となる。政治家にも胆力があったということだろうか。それでも、なぜ首相に地位に綿々と固執したのが描かれていないので、ちょっと不満が残る。
この映画には、ほとんど女優が登場しないが、吉田茂の娘役を演じる夏目雅子の美貌が際立っていたことも付け加えておく。
全体的に、現役政治家への遠慮からなのか、政治のドロドロとした部分があまり描かれてないように思う。政権交代があった今こそ、激動の戦後の政治を題材にした映画を撮ってほしい。それにしても、こう観るとこの時代からはじまる世襲議員が多いなあ。