退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

竹内一正『グーグルが本を殺す』

世間で議論を巻き起こしている Google Book Search(グーグルブック検索)についての議論を解説した本。以前よりこの問題に興味があり、期待して読んだが、かなりガッカリした。

100ページ足らずの薄い本であるのにかかわらず、Googleの歴史や社風など脱線が多すぎて、本題の掘り下げが足りない。いちばん酷いと思ったのは、次のくだりだ(p.75)。太字は引用者。

この意思表示の期限は9月4日でした。ここで誰がどのように声を上げたかは、みなさんすでにご存知のとおりです

いや知らないよ。脱線して紙幅をいたずらに費やすなら、少なくとも国内での議論を整理して、取材を交えながら誰がどのようなアクションを具体的にとったかを明らかにするべきだろう。さらに言えば、日本だけでなく欧州やアジア諸国の対応も網羅してほしいところ。

さらに、“『1Q84』はネットで読まない”(p.83)とあるが、Kindleなどの電子書籍リーダーを知らないのだろうか。書籍がデジタル化されるということのインパクトは、なにもPCのディスプレイで読むということだけを意味するのではないことにも留意が必要だろう。

また、本書は全編にわたり筆者のGoogle批判の色合いが強すぎる。もちろん意見を述べるのは当然だとしても、事実と意見が混然としていてとても読みづらい。きちんと峻別して書いてほしいものだ。

この本は、2009年9月17日発行とあるが、その後、米連邦地裁が和解案の最終審理を延期するなど、現時点でも収束をみていない。この問題を書籍にまとめるのは、いささか時期尚早の感もある。問題提起という意義はあるのかもしれないが、その割には関連文献など一次資料のリストなどが欠落していて、さらに理解を深めようとする読者にたいへん不親切なのも残念である。