- 作者: 奥野修司
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2009/07/04
- メディア: 新書
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本書では沖縄が抱える諸問題を取り上げながら、その課題・問題点を手厳しく批判している。ただ筆者の沖縄に対する愛が感じられるので、まったく嫌味はない。とても読みやすく、沖縄の現状がよくわかる良書。
特に観光政策についての提言には、なるほどと思うことが多い。例えば、「沖縄にはモノレールよりも路面電車の方が似合う」のは納得できる。私は、沖縄都市モノレール「ゆいレール」をずいぶんと利用したことがあるが、本書と同じように「LRTの方がいいのに」思ったものだ。郊外まで延伸できたら渋滞解消も期待できるだろうに。
また沖縄につぎ込まれている補助金についての考察も興味深い。沖縄の公共工事は別格で「国庫補助負担率」(p.126)が全国より格段の高いことには驚いた。例えば、河川改修費や道路改修費の場合、他県では国庫補助負担率が50パーセントだが、沖縄では90パーセントが補助される、という具合だ。その他にも米軍基地の絡みで「SACO交付金・補助金」をはじめとする様々な補助金があるという。
結局、政府に乗せられるのかわからないが、沖縄がそうして補助金を利用したハコモノに依存することになり、構造的に経済に自立できない状態に至っているのがわかる。しかし、これほど補助金を投入しても、経済はさっぱり振るわない。北海道に比べれば、補助金の用途には沖縄県の意向が尊重されるしくみだというのだから、やはり自己責任というべきか。
まあ、それでも芸能好きの気質から数多くの芸能人を輩出しているのは特筆できる。日本が均一化しているなかで、ひときわ異彩を放つ沖縄はユニークな存在で、ある意味貴重である。
最近、鳩山政権での与党連立協議において沖縄の扱いが話題になっている。左翼が騒ぐことにより、沖縄への補助金が増額され、ますます抜け出せない負のスパイラルに陥れなければいいのにと願うばかりだ。