退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

愛を読むひと

近くのシネコンで「愛を読むひと」(2008年、スティーブン・ダルドリー)を鑑賞する。何かのサービスで、料金1000円だった。そのせいか結構混んでいた。

愛を読むひと (完全無修正版) 〔初回限定:美麗スリーブケース付〕 [DVD]

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第一印象は、やはり英語劇かいうこと、セリフだけでなく、小道具の本も英語なのは違和感がある。ドイツ語で見たかったな。

前半は、「青い体験」を思わせる、少年・マイケルと成熟した女性・ハンナとの関係は映画になりやすい題材なのだろうが、撮影技術が際立つ美しい映画に仕上がっている。とくにサイクリングのシーンは秀逸。ケイト・ウィンスレットのヌードのうしろ姿も美しい。

ただ後半になるとどうも話が見えてこない。第一に、ハンナが被告として訴追された戦犯裁判において、マイケルは彼女を救うことができたのに、何故それをしなかったのだろうか。第二に、ハンナは重い刑を受けるのにもかかわらず偽証してまでも、文盲であることを隠そうとするは何故だろうか。登場人物の心情が見えないのだ。

ハンナが、自分が文盲であることを極端に忌避してのは何故かということを考えるには、彼女の生い立ちなどに遡らなければならないのだろうが、映画では、そうした説明がないので、話全体が腑に落ちないという印象が残る。説明不足なのではあるまいか。

また結末は衝撃的であるが、観客の期待する結末からは大きな隔たりがあるのも特徴といえる。突き放されたようなエンディング。しかも上述のように彼女のプロフィールが十分に描かれていないので、最後まで釈然としない、もやもやとした感じが残る。

最後に「愛を読むひと」という邦題はおかしい。ただ本を読み聞かせているだけなのだし、原作小説のタイトルも、“Der Vorleser”なのだから、小説の翻訳のとおり「朗読者」がいいだろう。