5月22日放送のNHK BS1「週刊・手塚治虫」は、エッセイストの岸本葉子さんがゲストだった。これまでのゲストの顔ぶれからは、岸本さんがこの番組に登場したのは意外な印象を受けた。彼女の装いは、白のニットのトップにパンツルック。
作品に最初に触れた子どもの頃の思い出というより、大人になってからあらためて読んだ手塚作品の解釈を開陳していた。雪山で遭難したヒゲオヤジがレオを食べて生還する「ジャングル大帝」のラストシーンを取り上げて、「再生されるいのち」「いのちの循環」という視点で、自分の大病の体験を重ねていたのが印象に残る。高尚な内容の端々に、さりげなくインテリであることを感じさせられる。
彼女は、こうしたシリアスな文章も書けるが、ふだんは「台所のスポンジ」といった日常生活のなんでもない事象にテーマを求めるほのぼの系のエッセイを得意としているようだ。インテリであることを表に出さずに、ほのぼの系エッセイで口に糊するというのは、どんな心持ちなのだろうか。
番組のなかで、写真家・星野道夫の『イニュニック 生命』の一節を岸本さんが朗読していたが、これは貴重。アニメ声だったけど。