新文芸坐で「明日への遺言」(2007年, 小泉堯史)を鑑賞する。原作は大岡昇平の小説『ながい旅』。東海軍司令官・岡田資中将が、無差別爆撃を敢行した米空軍搭乗員を処刑した罪を問われ、戦後、B級戦犯として裁かれる様を描く。
- 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
- 発売日: 2008/08/08
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敗戦国の将官が、敗戦後「法戦」に臨むという設定はユニークであるが、肝心の法廷劇をもっと緻密に構築しないと、訴求するポイントが明確にならない。いたずらに情緒に流された、感動するための映画になっているのは残念。
導入部で近代戦の非情さを伝えることで、無差別爆撃による非人道的な大量殺戮の正当性について言及するのかと思うと、裁判での争点にはならずに肩透かしを食う。本件については多様な視点・争点があるだろうが、この映画ではそれらの整理が不十分なのが致命的。藤田まことの重厚な演技をしても挽回できていない。