退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

『切腹』(1962)

新文芸坐の「仲代達矢 役者魂」という企画で「切腹」(1962年、小林正樹)を見る。

あの頃映画 「切腹」 [DVD]

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回想を巧みに用いた脚本(ナラタージュというのか)に加えて、津雲半四郎(仲代達矢)と斎藤勘解由(三國連太郎)の対話劇の緊迫感がすばらしい。ラストの大立ち回りも期待を裏切らない。

いまの視点で見れば、主家の改易で碌を失い浪人になるのは、サラリーマンのリストラと重ねることができるかもしれない。また時代の変化点という意味でも、寛永初期というのは今と似ているかもしれないなとも思った。

切腹する気もないのに門前で切腹させろといって金を受け取る浪人も、また竹光で切腹を強いる井伊家も十分に理不尽だ。まあ世の中は、理不尽なのは当時も変わらないということか。

脚本家・橋本忍の代表作であるだけでなく、日本映画の至宝のひとつ。是非見るべし。それにしても、竹光での切腹は痛そうだ。