角川シネマ新宿で「千羽鶴」(1969年、増村保造)を鑑賞。「増村保造 生と愛」という企画のなかの一本。文豪・川端康成の同名小説の映画化。ノーベル賞受賞記念作品の表記がある。
見どころは、ずばり若尾文子が熱く演じる大田夫人。終始、フェロモン全開で、ファンには堪らないかもしれないが、フツーの人は引いてしまうのではないか。原作を読んだときも、「色気違い」と呼ばれて尋常じゃないと思ったが、増村演出によって、それがさらに顕著に描かれているような気がした。
大田夫人が自殺したあと、映画が緩むのではないかと思ったが、梓英子が意外によかった。結局、彼女も菊治(平幹二郎)と関係を持ち、二重の親子丼ということになる…。
あと美術が秀逸なのも評価できる。日本家屋や、茶器などは重厚な趣が出ていた。映画を見た気分にしてくれる。
ストーリーは中途半端で終わるが、これは原作が短編を連ねたものなので仕方ない。続編の『波千鳥』も取材ノートが紛失したため未完となっている。
また、この作品は増村保造と若尾文子とのコンビによる最後の映画としても記憶に残る。
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