雑誌「SAPIO」2008年12月17日号で「田中角栄は生きている」という特集を読んだ。
特集は、なぜいま田中なのかというところから始まり、『日本列島改造論』にみる構想力、「官僚掌握術」、麻生首相との比較で説く「演説術」など、興味深く読んだ。
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松本清張が田中を評した言葉が引用されていた。梟雄(きょうゆう)とは「残忍で猛々しい人」という意だが妙に当てはまっている。
田中角栄は現代史まれにみる梟雄である。政界にこんな「天才」が現れるのは50年に1度あるかないかだろう。「金権政治」という単純なパターンで彼を裁ききることはできない。
いまの政界をみれば世襲議員が多い。そうでなければ、官僚出身者、マスコミで有名になった人、留学経験者が目立つ。もはや田中のように学歴のなく、身一つで立身出世を成し遂げて総理になることは過去のものになった。こうした状況では、有能な人物が政界を目指すはずもなく、人材が枯渇するのも仕方ないのかもれない。
ただこれは政界だけでなく、「格差世襲」といわれるように日本全体が流動性がなくなり閉塞状況に陥っているともいえる。こうした格差を是正するには、角栄流「土着的社民主義」を再評価せよ、と魚住昭氏が書いている。なるほどとは思うが、上の閉塞状況のなかで、既得権を持つものが権力を持っているのだから、新自由主義路線への傾斜が容易に止むことは期待できそうにない。
田中のような天才の出現が「50年に1度」というならば、確率的にいえば、そろそろ登場してもいいのかもしれないが、その気配はない。天下存亡を一人の政治家に託すというのも甚だ危険だと思うが、日本の状況は背に腹は変えられないところまできている。