先週、新文芸坐で鑑賞。「野上照代が選んだ映画たち」という企画の初日に映画『張込み』(1958年、監督:野村芳太郎)を鑑賞。
映画が始まってからタイトルが出るまで長いが、見事な出だしだ。その間に状況説明が巧みになされ、作品に惹きこまれる。脚本家・橋本忍の真骨頂というべき映画。シナリオの教科書としても用いられることも多いとのこと。
とにかく夏の暑さが、よく描かれている。舞台は高度成長期以前の佐賀なのだが、本当に日本なのかというほど貧しい。鉄道事情も今から考えれば驚くばかりだ。風景のひとつひとつを丹念に撮ることで、当時の生活観をうまく切り取っている。
また刑事が張込む旅館の二階から、高峰秀子を撮りおろす構図がいい。盗撮しているようだ。その高峰の日常を観察している若い刑事(大木実)の妄想というか思い込みがおもしろい。
終盤、一気に解決に向かう終盤の急展開もすばらしい。そして、なんともいえない余韻を残す。サスペンス映画の佳作。
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