退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

週刊ダイヤモンド: 特集「格差世襲」

週刊ダイヤモンド』2008年8/30号の特集「格差世襲」を読んだ。論調としては「格差」が次世代に引き継がれる世襲はそのままでよいのか、と問題提起している。

週刊 ダイヤモンド 2008年 8/30号 [雑誌]

週刊 ダイヤモンド 2008年 8/30号 [雑誌]

Part 1「貧困と富が世襲される国」では、豊富なデータに基づき格差が世襲されている実態を明らかにしている。驚いたのは富裕層が海外で子息の教育を受けさせようとする熱意であり、そして教育には出資を惜しまないという姿勢である。資産を相続させることは是としないが、教育という形で富を付与する分には問題ないと考えていて、きわめて合理的である。きっと、雑誌『プレジデントファミリー』をじっくり読んでいるのだろう。

また「リッチ層・貧乏層1300人アンケート」で、リッチ層を「相続リッチ」と「新興リッチ」に分類しているのが興味深い。調査結果は、ほぼ実体験に沿ったものだという感じがするが、細かく見ていくといろいろ面白い。例えば、非正規ジュニアが、toto、競馬・競輪、パチンコに、より勤しんでいるのは、なるほどと思わせる。

Part 2「格差是正の処方箋」では、タイトルとは異なり明確な処方箋を示されないが、堺屋太一の言う「健全な格差」というコピーはいつもながらにうまい。このパートでは、「元ホームレス社長の檄」で、生活創庫社長・堀之内九一郎オウケイウェイヴ社長・兼元謙任が自らの体験談を語っているインタビューがいい。

Part3「政官財の世襲天国」のなかでは、とくに政界で世襲がいかに深刻であるかわかる。もう田中角栄のような自らの実力のみで権力の頂点に着くという政治家は望めないようである。昨今の世襲議員が跋扈しているのをみるにつけ、英国の腐敗防止法に倣い世襲を制限するべきだと思わざるをえない。

古今東西を問わず格差のない社会は存在しないのだが、何をもって「健全な格差」とするかが問われている。格差はあってもよいが、下層の人々があまりにも惨めな生活を強いられる社会は、およそ健全とはいえない。まったり過ごしていても、なんとか生活できる社会であってほしい。