退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『居眠り磐音』(2019) / 幕の内弁当のような時代劇映画

新文芸坐で映画『居眠り磐音』(2019年、監督:本木克英)を鑑賞する。佐伯泰英による時代小説シリーズの映画化。主演は松坂桃李。併映は『武蔵 -むさし-』で時代劇二本立てだったが、併映作が目当てだったので、こちらはほとんど予習なしで見た。

豊後から江戸詰めになった坂崎磐音(松坂桃李)たち親友三人は、藩の将来を担う若手侍だった。3年間の務めを終えて帰郷するが、そこには過酷な運命が待っていた。誤解と軽率な行動から3人は殺し合うことになり、上意討ちで親友を斬った磐音は藩の職を辞し江戸に戻る。数年後、庶民に混じり貧乏長屋に暮らす磐音は鰻屋の手伝いや、用心棒家業で糊口をしのいでいたが……。

映画『居眠り磐音』5月17日(金)公開(スペシャルトレーラー)

映画を途中まで見て、これはNHKで放送されていた『陽炎の辻〜居眠り磐音 江戸双紙〜』(主演:山本耕史)と同じ話ではないかと気がついた。

テレビドラマでは時間をかけてじっくり描けることも映画ではそうはいかないのだろう。国元での人物相関がややこしく、磐音が江戸に戻るまでいちいちテロップで人物を説明しながら駆け足で進んでいくのでちょっと疲れる。また、さかやきがある髪型だと登場人物が誰が誰だかわからないのも難点か。

江戸に戻ってから磐音が持ち前のおっとりしたキャラクターと剣の腕前で人々の信頼を勝ち取っていく人情噺はちょっといい。

f:id:goldensnail:20191105144758j:plain

殺陣は様式美というより現代アクションという演出になっていて、出演者たちがすさまじいスピードでアクションシーンを演じている。こういうスタイルが現代風で映像技術の進歩の賜物なのだろう。二刀流の敵役との戦いで、受けた二刀もろとも相手の脳天を叩き割るシーンはしびれた。また主人公が圧倒的に強いというわけではなく、戦闘のあとに負傷するのはリアリティが感じられる。

ちょっと惜しいと思ったのは、ラストの花魁道中。磐音がかつての婚約者(芳根京子)と再会するクライマックなのだが、肝心の花魁道中が地味できらびやかに欠ける。芳根京子せいなのか美術のせいかのかわからないが、もう少しなんとかならなかったのか。

人情噺あり殺陣ありの娯楽時代劇としては十分に楽しめた。とくに殺陣のシーンが冴えているのがいい。続編があれば見てみたい。

f:id:goldensnail:20191105145203j:plain