退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】工藤勇一『学校の「当たり前」をやめた。 ― 生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革 ―』(時事通信社、2018年)

千代田区麹町中学校の工藤勇一校長の学校改革の取り組みを紹介した本。

各種メディアにも取り上げられたらしいが、私は以下の表紙のコピーに惹かれて読んでみた。

  • 宿題は必要ない
  • クラス担任は廃止
  • 中間・期末テストも廃止

これらは相当ドラスティックな改革なので、いま流行りの民間校長かと思ったがそうではない。大学卒業後、地元山形県で公立校教員として勤務し、その後、東京都に移って教員を経て、教育委員会などで教育行政に携わっている。教員出身の校長である。

本書では上記コピーを含めた学校改革を詳しく説明していて、それぞれなるほどと興味深く。驚いたのは、これら従来当然とされてきたことが、実は文部科学省が統制しているわけではなく、多くは慣習であるということ。なので現場がその気になれば変えられるということだ。

これだけ思い切って改革できれば、リスクはあるもののやりがいがあるだろうと思った。しかしタイトルにあるように公立校とはいえ名門校であり、財政的にも人材的にもさまざまな面で恵まれた環境にある。

筆者がまえがきに述べているように、そのままフツーの公立校に取り入れることは難しいだろう。それでも公立校でもこれだけのことができる、ということを実践で示したことの意義は大きい。一方、公立校のもかなりの地域格差があることも事実であり、これについては複雑な思いがある。

私は進路選択のときに教員になることを考えたこともあった。しかし勉強はまあまあできたが、学校そのものが嫌いなのですぐに考え直した。学校を職場に選ぶことはおよそ考えられなかった。この本のように学校を変革するという発想はまるでなかったのだ。いま振り返ってみると、やはり私は教員の器でなかったなと胸をなでおろしている。

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