退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『魔子恐るべし』(1954) / プロポーション抜群の根岸明美の魅力が全開の不思議な映画

新文芸坐の《精緻と克明 鈴木英夫の手腕》という企画で映画『魔子恐るべし』(1954年、監督:鈴木英夫)を鑑賞。鈴木監督の東宝移籍第1作。白黒映画。

魔子恐るべし (1954年)

魔子恐るべし (1954年)

山で出会った画家の福田という男を訪ねて信州から上京した魔子(根岸明美)は、グラマラスな肢体を目当てにした男たちに付け狙われる。海千山千の都会の男たちに「福田さんのところに連れて行ってやろう」と言われると「ほい!」と応じる、天衣無縫な魔子は、武道館の屋根に登ったり、プロレスのリングに上ったり、ストップ劇場で踊って話題になったり、東京でさまざまな体験を重ねながら、福田を探すが……。

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不思議な映画である。まず魔子の衣装がおかしい。和服で太ももを露出させた謎のファッション。原作本の表紙のイメージだ。根岸明美の脚線美を強調したファッションでなかなか攻めている。もちろん東京では浮きまくり。

日劇ダンシングチーム出身の根岸は、この映画でダンスを披露していて魅力的に撮れていて、なかなか楽しめる。根岸は、今見てもなかなかグラマラスに思えるが、当時はいま以上のインパクトがあったにちがいない。もっとも本人は「肉体派女優」と言われるのは本意ではなかったようだが。

その強烈な魔子のキャラクターと対峙するのは、天下の名優・森繁久彌。オネエ言葉を自在に操り、芸達者ぶりを遺憾なく発揮している。さすがです。

ラストで魔子はついに福田の家とされるぼろ屋にたどり着くが肝心の福田の姿はない。画家の福田という情報だけで人探しをするのがそもそも無理なのだが、これが本当に福田の家なのかもあやしい。結局、魔子は福田に会えずじまいで終わる。突き放したエンディングは鈴木らしい。

映画の上映後、ロビーで掲示物を読んでいると、見知らぬお客さんから本作の批評のコピーをもらった。田中英司「まぼろしのサンガ映画」というタイトルの映画批評で、魔子がサンカ出身だという解釈から論を展開している。まあサンカ出身だという確たる根拠は示されていないように思えるが、映画を見た直後にこうした批評を読むのは悪くない。コピーをくれた人に感謝。

ちなみにこの批評は、下の『サンカ -幻の漂泊民を探して』という書籍に載っている。

サンカ -幻の漂泊民を探して (KAWADE・道の手帖)

サンカ -幻の漂泊民を探して (KAWADE・道の手帖)

サンカの映画といえば、今年、萩原健一の追悼企画で見た映画『瀬降り物語』(1985年、監督・脚本:中島貞夫)が知られている。この批評を読んで本作と併せて『瀬降り物語』にも思いをめぐせてみた。

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